一冬の滞在研修が終わろうとしています。憧れであった、ラップランド、スカンジナビア極北の長い冬の様々な体験。春からは、内陸部タンペレ近郊の村での研修が待っています。
今、しみじみと素晴らしいラップランドの冬を思い、そこを去らねばならないさみしさを感じています。テレビやネット、書物では全く感じることのできないラップランドの姿がありました。今回ほど、事前に仕入れた知識の無力さを実感したことはありません。むしろ、自分が大人になるまでに体験し、感じ続けてきたことだけが実際の姿を理解することに役に立ったと思います。
また、湖面の割れるすさまじい音が・・大丈夫だと分かっていてもこわいもんはこわい。
有名なメッセンジャーバッグ、ティンバックも、わざわざ寒冷地仕様ではありません。あまりに寒い日にはしなやかさを失い、ポテチの袋のようにパリパリと音を立てます。シベリアだったらもたないかもしれません。
フィンランド最高のバイオリンのマエストロ、エンシオさんもおられる工房ですが、これはその弟のヨルマさん(これまたご兄弟そろって素晴らしく愉快な方)の、ウッドベース。
ここで知り合った沢山のウッドカーバーの皆さんが私は大好きです!
祖父を持ったことの無い私に、本当の祖父のように、ひとつ、ひとつ、さまざまなことを経験させ、教えてくださいました。
買ったばかりのナイフを失ってしょげている私に、いつまでも付き添って探してくれたレイヨさん。地方紙の遺失物欄にそのことを載せてくれました。
またテウロさんは、息子さんが設計し、またパイロットとして操縦するという自慢の飛行機の大きな写真、図面、沢山のアルバムを見せて楽しい話をしてくれました。お別れの日は、自慢のトヨタが故障していらっしゃれずお会いできませんでした(涙)皆さん全員のことはとても書ききれませんが、一人ひとり、存在感の実に濃い、魅力溢れる男たちでした。そして今は大切な恩人、友人です。
真の芸術作品。・・うそ。
ちょっとした時間に自慢のナイフを引き出しから・・
(ほれ込んで買った一本を、雪の上で失くしショックでしたが、後にそのナイフ工房まで行って再度直接買いました!尊敬する職人、ヘイモ氏が、工房を隅々まで案内してくださり、古い工作機械などの説明もしてくださいました。
購入した最高の一本のグリップ長さも、私のために短くカットしてくれました。思いもよらずまったく私専用のカスタム品をつくってもらうことになりました。感動のあまり身震いました!分厚い手をしてたなあ・・)
・・でそれでこそこそと夜長の工作します。暖炉の横で・・憧れの隠居生活!
取材の脚は、もっぱらスキー。シューズも、スキーも、クロスカントリー用はとても軽い。
誰かが作った湖面のスケートリンク。
有名なスキーリゾート。
死ぬで・・こんな斜面・・
写真ではそうでもないようですが、実際信じられん位に高く、急です。
一月には客は誰もいません。この日もパウダースノーの素晴らしいコンディションなのに、ゲレンデ全体にわずか数人しか滑ってませんでした。こっちの人は言います。「だってこんなさむいときにスキーはしないよ。」
なんにせよ、上級者にはパラダイスでしょう。
わたしは・・?その・・スキー持たずに来ました。未だ死にたくありませんから。鬼コーチに「このいくじなし!」と、怒られました。
取材にきたんですから当然です!!重い機材持ってひたすらざっくざっく歩きました!!(人が足に板つけて雪面を滑る、なんてどう考えてもおかしい!!とおもいませんか?? 神をもおそれぬ愚行です。ええ、そうですよ!!)
ヒルの上から呆然・・
しぬる・・・
過酷な地の情景と言うことを、忘れてしまいます。
木彫りの師匠と、偽ラップ人。
やさしく美しい女性軍団からのおもてなし。男はなんと私一人!天国か、それとも裁きの場か?あとひとり特任スキーコーチもおられます。
はい、裁かれました。
すまない美しい女性たち!私のために日本食を・・!! ?
※一部、あるいは全てにおいて脚色されている場合がございます。
私の子供たち。右から長男の・・
いえ、私がスパルタ教育したエリート小学生たちです。しかし、素晴らしい環境で学んでいますね、こちらのおこさまどもは。
最も素晴らしいフィンランド人の一人に(私により)選ばれた、現代作家のカッレさん。写真中央、いや、右。この作品にもかなり深いメッセージが。
手にしているフリーマガジンの表紙の彫刻作品があまりにカッコいいので走ってもらいに行ったら、「あれ、それ俺の作品だよ!」
すごい偶然!! しかし、わたしの行動は作者にとって最もうれしいリアクションだったに違いありません。
たくさんの方々のお世話になりました。
本当はもっとご紹介したかったのですが、ここでの情景の写真以上に、彼らと撮ったスナップ写真の方が大切なくらいです。たのしい人たちとの素晴らしい時間、いい表情、たくさん撮影しました。
信じがたいような体験の数々は勿論私の宝です。しかし今回のラップランドでの経験を一言で表すなら、『素晴らしい人たちとの出会い!!』につきます。
あっちでもこっちでも、私みたいな“謎の自称アーティスト”を歓迎してくださってありがとう。すぐにまた帰りますから待っていてください。プライド高い、やさしいラップの人たち。
ついに完成できなかった雪の壁。
元小学校。
お世話になったご夫婦のうつくしすぎるお宅。ここでほんとに日常生活されてるのか、と思うくらいきれいなお宅で、どの部屋も客に対して開け放たれています。フィンランドの方のお宅はほとんどそんな感じで、(一人、強烈な例外あり!)ベッドルームにいたるまで、「見せられない部屋」がありません。共働きでお忙しいのに、生活習慣と、日常の美意識がまるで違うのを感じます。
だんなさんもすごく面白い人で、突如敢行された夜の雪山散歩(半遭難)など、最高の思い出をプレゼントしてくださいました。森の奥深くから見上げた星空の美しさは今まで味わったことのないものでした。最高でした!!
だんなさん、暖炉でマッカラを焼きながら、私の靴下を乾かしてくださり有難うございました。
奥様も表情の豊かなステキな方で、(Big smile with wide opened eyes!!)私の奥さんと仲良くサウナ&ルミエンケリを素っ裸で楽しまれました。私もだんなさんと仲良く、サウナ、ビール(1L)&ルミエンケリ。サウナの裏にはそのための出口と積もりまくった雪、そして少し離れに川もあります。ちなみに星空の雪上でバスタオルをバサッと脱ぎ捨てる奥様の姿はさながらゴルゴ13に出てくる妖艶な女兵士の様だった、そうです。
※ルミエンケリ、(雪の天使)とは。
解説:サウナのあと、雪に裸で大の字にダイブして、手だけばたつかせます。すると雪上に人型の痕跡が出来ますが、手の部分だけブレます。それがまるで羽根のように、シルエット全体が天使に見える、というフィンランドの国民的慣習のひとつです。(一部のフィンランド人は頑なに否定)決して酔っ払いフィンランド人の痕跡ではありません。だって、ルミエンケリ、は雪のエンジェルちゃん、の意味ですから。
そういえばクリスマス後にロバニエミに行った時、大通りの道端にどう見ても素っ裸!のエンジェルちゃんがいましたが、どうやってあんな人通りの多いところに出現できたのだろうか、と考えてしまいます。
やはり、天使はアルコールの産物か?
真夜中のようですが、四時くらい。てくてく歩いて、お世話になった方々のお宅にさよなら挨拶訪問。半泣きです。
ラップランドを離れる当日。しばしのお別れの挨拶に来たのにご不在とは・・泣けますなあ。
シニッカさん、日本に住んでおられた経験を楽しさいっぱいに語ってくれて有難う! 日本の素晴らしいところ、いっぱいフィンランド人に伝えてくれてありがとう!!
あなたの笑顔は最高です。また会いましょう。
そしてまた、必ず日本に来てください。私もみんなも、いつでも大歓迎いたします。
寂しい夜道・・
一番親身にお世話してくださった方の一人のお住まい。
いつもの夜道も今日は違う。
大好きな人たち、将軍様!! 見送ってくださってありがとうございました。
ラップランド万歳!!
ラップの男と車内でもラップビールで乾杯!!ヘルシンキがどうした!!やつら、いざとなったら何にも出来ないぜ!!
「ところでおまえ、ラピンクルタなんて”偽ラップビール”なんかのむんじゃねえ!」
前に乗った時は期待に満ち溢れたVRでしたが、いまはこの赤が沈んで見えます。
次に向かうTAMPEREはちょっとフィンランドに詳しくなった人たちが、ヘルシンキの次にあこがれる街。
そこでも、私の美術関係者が待ってくれています。寝台車で、一夜を明かせば、新しい出会いが待っている。きっと素晴らしい出会いに違いありません。
車輪の振動、どこまでも続く黒い森。星空。ところどころで停車する、どこかの駅の寂しいホーム。来るのと去るのはこんなにも違う。
私が始めてこの深夜列車に乗ったときは聖人の日。過ぎ行く景色の中に時折見える、森の中の家窓辺に、雪の庭に、たくさんのろうそくの灯がともっていました。幼いころよく読んだ北欧の童話の世界。 真っ暗な森、雪原、そこに生きる人々。大きな大きな星空と、冬の冷機に包まれて・・
ごとん、ごとん・・いつのまにかうつらうつら・・降り過ごさぬようにしなくては・・